売上高はついにキー局4位に転落!フジテレビがSBI北尾氏の取締役就任を「受け入れるべき」2つの理由

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

例えば、著作権活用は権利者との議論がすっきりした形でまとまりきれず、ビジネス的に使いにくい状況だ。意見の対立を北尾氏がまとめ、金融的な解決策も提示できるかもしれない。難題は多いが、まとまらなかった議論をまとめる役割を北尾氏が担ってくれれば、フジテレビがIP(知的財産)活用の分野で先んじる可能性もある。

もう1つ別の理由は、5月9日のSBIHDの決算発表会見を見て感じたことだ。あくまで金融グループとしての会見だったのだが、その中で「ネオメディア生態系」というコンセプトが登場した。北尾氏は「メディア、IT、金融の融合」を今年に入って掲げていたが、それに初めてネーミングがなされた。

いくつかの要素で構成されているのだが、私が最も興味を持ったのが地域経済におけるメディアの役割だ。SBIグループは地域金融の支援に注力している。「ネオメディア生態系」の一環として、地域の金融機関と地域のメディア、新聞とテレビ局が一帯となることで地域経済を活性化させる、という考え方を示したのだ。

5月19日にSBIHDは新会社「ネオメディアホールディングス」の設立を発表した。1000億円のファンドも立ち上げるなど、北尾氏のメディアに取り組む意気込みは本気だ。

もともとローカル局は、地方の有力新聞社と地域の財界が力を合わせて立ち上げたものが多い。中には、地方銀行が大株主として社長を送り込む例もある。

そんな元々あった仕組みも、地銀が衰退し弱っている。そこをSBIグループが資本的にバックアップし、金融とメディアが一体となって地域経済全体を活性化させる考え方だ。

不要な争いは広告主の離反を長期化させる

この「ネオメディア生態系」を理解すると、北尾氏がフジテレビの経営に参画することは、日本全体のためになるのではないかと期待したくなる。また、本丸は地域経済であって、フジテレビには意外に口出しはしないのではないか。

北尾氏が傲慢な態度を反省し、ネオメディア生態系についてきちんとフジテレビ側にプレゼンすれば、そしてフジテレビも北尾氏への感情的は反発は置いて、その剛腕や地域経済への影響力をプラスに受け止めれば、いい形ができるのではないかと期待する。

だが、互いに全面対決の姿勢を取るなら、株主総会までのプロキシーファイト(委任状争奪戦)になり、北尾氏が本当に5%を保有する大株主になって臨時株主総会の招集を求める可能性もある。お互いにとって不要な争いを続ける展開を危惧する。さらに中居正広氏が第三者委員会報告書に反論を始めており、それを含めて泥沼化するおそれもある。

今いちばん大切なのは、フジテレビが改革への歩みをクリーンに進め、広告主に「変わった」と認めてもらうことだ。不要な争いは「いつまでもめているのか」と広告主に思われかねない。今からでもうまく折り合えないものか。テレビ業界に多くの友人を持つ者として、Win-Winの展開となることを切に願う。

境 治 メディアコンサルタント

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

さかい おさむ / Osamu Sakai

1962年福岡市生まれ。東京大学文学部卒。I&S、フリーランス、ロボット、ビデオプロモーションなどを経て、2013年から再びフリーランス。エム・データ顧問研究員。有料マガジン「MediaBorder」発行人。著書に『拡張するテレビ』(宣伝会議)、『爆発的ヒットは“想い”から生まれる』(大和書房)など。

X(旧Twitter):@sakaiosamu

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事